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【小説】「思い出が消えないうちに」レビュー

「思い出が消えないうちに」

サンマーク出版



著者 川口俊和

サンマーク出版

 

2018年9月25日初版発行

 

 

コーヒーが冷めないうちに」「この噓がばれないうちに」の続編として出版された本作。

もし、明日、世界が終わるとしたら?

人生は選択の連続です。何を飲もうか?といった小さな選択から人生最大の選択を迫られる時もあります。物語の中で”もし、明日、世界が終わるとしたら?”その質問に2択で答えるという1冊の本が登場します。このお話はいわば、2択、過去へ”行く”か”行かない”かを選択をした人達の奇跡の物語。伝えるか伝えないか…。あなたなら過去へ行く・行かない?未来は変えられなくても、何か変化があるかもしれません。今どの選択をするか、で。

 

 

あらすじ

とある街の、とある喫茶店の、とある座席には不思議な都市伝説があった。その席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという

ただし、そこには面倒くさい…非常に面倒くさいルールがあった

この物語はそんな不思議な喫茶店で巻き起こる奇跡のお話。舞台となるのは、北海道にある「喫茶ドナドナ」。店主の時田ユカリは、世話好きで自由人。出会った少年の父親を探す旅にフラッとアメリカへ行ってしまった。そんな店主の一時不在を助けるため息子である時田流は東京の自身の店「喫茶フニクリフニクラ」に娘を残し、従妹である時田数、数の娘の幸とともに北海道へやって来た。この喫茶ドナドナにもまた、”過去に戻ることができる席”が存在している…。「ばかやろう」が言えなかった娘の話、「幸せか?」と聞けなかった芸人の話、「ごめん」が言えなかった妹の話、「好きだ」と言えなかった青年の話。過去に戻ってどんな努力をしても現実は変えられない。それでも
過去に(未来に)行くことを選択した人たちの、感動の物語。

 

 

 

感想

本作の舞台となるのは、「コーヒーが冷めないうちに」から14年後、北海道函館市にある「喫茶ドナドナ」です。「ドナドナ」は時田流の母、時田ユカリが営む喫茶店で、ユカリは時田数の母の姉。そして、このドナドナにも「過去に戻れる不思議な席」が存在しているのです。過去へ行くためのコーヒーを入れられるのは”時田家の女だけ。そんな事情から、流はフニクリフニクラに娘を残し、二美子達に店を任せて北海道にやって来たのでした。「コーヒーが冷めないうちに」で流の妻・計が過去に戻った時に流が北海道にいる、というハプニングの正体はこういう事だったのか、という伏線回収もあり、さらに「この噓がばれないうちに」で、数が妊娠していたという話の続きもきちんと説明され(娘はもう7歳!)さらに夫は世界を飛び回る有名な写真家だという事まで明かされました。そんな、「コーヒーが冷めないうちに」「この噓がばれないうちに」の続編となった本作は、舞台も変わり、お馴染みの常連客も違うメンツとなり、新しい物語のようで、それでいていつものように鋭い観察眼の数や、実直な流に安心します。そして、新たな登場人物として数の娘・幸も加わりました。しっかりとした幸はさすが数の娘だな、と感心させられます。そして、常連客の女性たち、従業員の青年。突如渡米してしまった店主の時田ユカリ。それぞれの物語で奇跡を起こす登場人物たち。このシリーズは本当に読みだすと沼にハマってしまい一気に読んでしまいます。今回の物語で特に印象的だったのは、(全部素敵なお話なんですが)「ごめん」が言えなかった妹の話。妹を亡くし憔悴しきった彼女の前に妹が現れます、もちろん過去から…。この席には未来にも行くことができます。その時間に合わせて会いたい人が店にいてくれることを約束した上で。妹の雪華は自分が亡くなってしまったあとの姉・麗子の事が気がかりでした。そこで未来(自分が死んだ後)に姉を店に取れてきてくれるよう頼み、あの席に座ります。このお話で一番の演出が、”停電”です。ページをめくって思わず「わっ」となってしまいました。仕掛け絵本というわけではないのに、この演出には情景を感じられ引き込まれました。そして、”停電で互いの顔が見えないというのもこの二人にとって大切なシチュエーションであったのだと感心します。本の演出でこのような感動を感じたのは初めてでした。小説には、行間や改行、字の大きさ、様々な表現で心情や情景を表すものがあります。そんな手法の中でもこの演出はグッと引き込まれます。そして、最後にもこの作品には息を飲まされました。作中に登場する『もし、明日、世界が終わるとしたら?一〇〇の質問』という一冊の本。この本も登場人物のスパイスとなり一役買っているのですが、最後のページに書かれたあとがきが、記されています。その言葉には、このシリーズを通しての本質であるような言葉があり、余韻に浸りこの作品を読み終わっても心に残るものとさせてくれました。

www.sunmark.co.jp

 

 

おわりに

シリーズ物で、登場人物のその後が描かれるものは多くあります。そういった歴史を辿りながらそれぞれの成長や変化を楽しめるのもシリーズ物の楽しみです。この作品では1作目から14年後、2作目からは7年後となっていますが、その空白をもしっかり楽しめるような内容であり、新しい出会いもあり、新鮮でありながらどこか落ち着く、そんなシリーズです。(我が家では「うちに」シリーズと呼んでいますw)どんな年代の人でも楽しめ、感動できる小説で、語り継いでいきたいなと思う作品です。

 

シリーズ1作目の「コーヒーが冷めないうちに」レビューはこちら!

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