【小説】「コーヒーが冷めないうちに」
著者 川口俊和
お願いします、あの日に戻らせてください ー 。
「ここに来れば、過去に戻れるって、ほんとうですか?」
不思議なうわさのある喫茶店フニクラフニクラを訪れた4人の女性たちが紡ぐ、家族と、愛と、後悔の物語。
ー 4回泣けます
「コーヒーが冷めないうちに」帯より参照
本作は、2015年に初版発行された、著者川口俊和氏の小説デビュー作。この作品以降に続編3冊が発売されています。
あらすじ
「過去に戻れるのはこの喫茶店の”ある席”に座った時だけなんですが……」
喫茶店フニクラフニクラに伝わる都市伝説、「望んだ過去に戻れる」という不思議な伝説で、多くの人が立ち寄り取材を受けたりもして特集が組まれるなど多くの人が知っているのに、実際にこの体験をした人はほとんどいない。過去に戻れるのが嘘か本当かもほとんど誰も知らない。なぜなら、この「過去に戻る」ための、それはそれは面倒くさいルールが存在するから…。
その中でも、過去に戻って何をしても未来(つまり現在)には何も影響しない、未来は変えられないというルールがあるため、ほとんどの人が過去に戻っても意味がないと思い、ただの都市伝説として人々の関心は薄れていきました。そんな不思議な伝説にすがるように訪れる一人の女性、夫の認知症に悩む看護師の女性、スナックを営む常連客の女性、この喫茶店の店主の妻、4人の女性に起こる奇跡の物語。
感想
ー 4回泣けます
この文字通り私は4回泣きました。このお話は本当に感動しました。みんなに薦めたい小説No.1です!実際に家族・友人にも薦め、好評でした。まず、帯に書かれた「4回泣けます」ーなんて自信満々なお言葉でしょうか。その言葉通り、4部作で構成された物語一つ一つが心に染み、なんなら5、6回泣けるってもんです。読む年代、性別によっては染みる箇所は変わってくると思いますが、老若男女だれにでも想像ができるシチュエーションだと思いますし、それぞれの章での主人公を自身に当てはめる事で思うところがあると思います。私も、特に「夫婦」「親子」の章ではグッとくる事が多く、読み終わる頃には涙でぐちゃぐちゃでした。(泣きすぎw)「親子」の章での主人公は、この喫茶店の店主・時田流の妻で、生まれつき心臓に持病を抱えながらも生来の人懐っこさと”幸せに生きる才能”で周りの人たちから愛され、明るく前向きな彼女はいつも笑顔の絶えない素敵な女性、時田計。彼女が妊娠し、体調の悪くなっていく中で、生まれてくる子のそばにいられないかもしれない罪悪感、生きる希望と葛藤し、この喫茶店のその席に座る事でできる時間移動に希望を掛けた心情に心打たれます。喫茶店に流れるゆったりとした時間の流れ、時間移動の細かなルールのもどかしさ、主人公たちの心の葛藤など、この作品には引き込まれるところが多く、何度でも読み返せる作品だと思います。私の持っている単行本ももうカバーがボロボロで、それでもずっと読み伝えていきたい作品の一つです。この作品は主に女性にフォーカスした章で構成されていますが、次作の「この噓がばれないうちに」では4人の男性にフォーカスした4話のお話で構成されています。そちらも併せてご覧いただけたらと思います。
おわりに
この作品を元にした実写映画も2018年に公開されています。ご存知の方も多いと思いますが、映画と小説とで設定が異なっている点もあります。それはそれで楽しめるものなのでこの「過去に戻れる喫茶店」での奇跡の物語に浸ってみて欲しいと思います。映画 コーヒーが冷めないうちにのレビューも上がっていますので読んでいただけたらと思います。また、シリーズ作品として『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』『さよならも言えないうちに』という作品もあります。こちらは順次レビューも更新していこうと思っていますのでよろしくおねがいします!
*シリーズ紹介*
『この嘘がばれないうちに』 (順次更新予定!)
『思い出が消えないうちに』 (順次更新予定!)
『さよならも言えないうちに』 (順次更新予定!)
*リンク*
【映画】「コーヒーが冷めないうちに」レビュー