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【小説】「その白さえ噓だとしても」|階段島シリーズ  心を穿つ青春ミステリ「いなくなれ、群青」続編

”階段島シリーズ” それは、小説「いなくなれ、群青」から始まる青春ミステリ。シリーズ第2弾「その白さえ噓だとしても」をご紹介します。

新潮社



 

いなくなれ、群青

シリーズ第1作目

平成26年9月1日 発行

令和元年8月30日 18刷

著者 河野 裕(こうの ゆたか)

新潮社発行

新潮社



ある日唐突に階段島に連れてこられた高校生、七草。「ここは捨てられた人たちの島です」そう告げられ、ここから出るためには失くしたものを見つけなければいけないという…彼らはなぜ捨てられたのか?そして階段島とは何なのか?その謎を追うつもりもなないままただ平穏にくらしていたが、かつての友人、真辺由宇との再会で七草はこの島の秘密に直面していくことになる。

 

詳しくはこちらの記事で紹介しています。あらすじから、主な登場人物についても説明していますのでぜひこちらからご覧ください!
 

その白さえ嘘だとしても

シリーズ第2作目

平成27年6月1日 発行

 

あの頃の僕らは、誰かのヒーローになりたかった。

 

あらすじ

クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。島の唯一の物資ライフラインであるインターネット通販が使えなくなってしまった。犯人と噂されるハッカーを探す真辺、後輩女子のためにヴァイオリンの線を探す佐々岡、島に流れるクリスマスの七不思議に巻き込まれる水谷。そして、それぞれの事件が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。

 

登場人物

七草

高校一年生の夏、突然この島に連れてこられたが、ここでの暮らしを気に入っている。真辺由宇への複雑な思いを持ったまま、階段島の秘密に直面していく。

真辺由宇

とても真っすぐな理想主義者で、どんな問題にも立ち向かっていく。

佐々岡

いつもイヤホンでゲームミュージックを聞いている明るい少年。七草たちのクラスメイトで、偶然出会った中等部の女の子のため、ヴァイオリンの線を探し回る。

水谷

七草たちのクラスの委員長で、真面目で頼られる存在。人間関係をうまくやり過ごす事をモットーとしていて、誰にでも優しく困っている人を放っておけない。

背が高く目つきの悪い無口な女の子。七草には心を開き始めている。

豊川

水谷の寮の後輩で中等部の生徒。ストーカー被害に遭っていると水谷に相談する。

時任

階段島の郵便配達員。クリスマスイヴ大量に投函されたクリスマスカードの配達に朝から島中をカブで走り回っている。

相原大地

島にいる唯一の小学生。七草たちの寮で暮らしている。クリスマスイヴなぜか姿がみられなくなりアパートの一室で見つかる。

魔女

階段島を管理する魔女。島のすべてを管理しており万能の魔法で人々の生活を守っている。誰も正体を知らない。

ミュージシャン

ゲームセンター「ガレキ」に月に1度現れる謎の女性。一言も喋らず音ゲーで高得点を叩き出し、去っていく。

 

 

 

ポイントとなる「クリスマスの七不思議」

 

1. 恋愛成就のサンタクロース。

とても律儀なサンタクロースがいて、彼に「恋人が欲しい」と手紙を出すと、好きな相手をさらってでも連れてくる。

2. 海辺に落ちている手袋。

クリスマスイヴには、小さなお地蔵様がある海辺の通りに、必ず手袋が落ちている。

3. 魔女の手先のクリスマスパーティ。

魔女は階段島を監視するために、住人たちに手先を紛れ込ませている。その手先たちがイヴに集まって行う秘密のパーティがある。

4. 島に逃げ込んだ犯罪者。

凄腕のハッカーホワイトハウスツイッターアカウントを乗っ取った。結果、大問題になり階段島に逃げ込んできた。

5. 必ず失敗する演奏会。

イヴの演奏会は呪われていて、絶対に開催されない。強引に開こうとすると悲劇が起こる。

6. 毎年クリスマスケーキが供えられるお墓。

島のどこかに、イヴに欠かさずケーキが供えられているお墓がある。

7. 願いが叶う聖夜の雪。

階段島のイヴには雪が降る。雪が降る夜空に向かって願い事をすると、それが叶う。(追加されたver :相手が望むものをプレゼントしたのにお返しを貰えなかった人が、雪の降る夜空に願い事をすると叶う)

 

感想

このお話での最大のポイントは「魔女」でした。インターネット通販が止められてしまうという大事件は何を意味しているのか?その大事件と島に流れるクリスマスの七不思議の噂、それぞれが交錯し、それぞれの想いが見えた時、悲しくも美しい想いに息を飲まされました。一話「みんな探し物ばかりしている」ではその名の通りみんながそれぞれ探し物をしています。中でも印象的で、この物語の中枢になる佐々岡くんの探し物「ヴァイオリンの線」がもたらす結末が苦しくもあり、素敵で、このシリーズを通しても一番真っすぐで青春の若者を象徴する素敵な物語だったのではないかと感じます。同じく、水谷さんが探すもの、頼られる事、そして自分の心と向き合ったときのどうしようもない感情に戸惑う姿や動揺に胸が締め付けられるような気もします。この物語では「ヒーロー」という言葉がたくさん出てきます。ヒーローについての定義だったり、憧れだったりが、若者たちにとってたくさんの意味を持たせ奮い立たせる魔法となっています。こんなにも真っすぐに信念を貫けるのも若さゆえ、この島ゆえなのだと感じました。真辺由宇はどこまでも真辺由宇であり、七草はやっぱり七草で。その存在が怖くもあり安心もあり、階段島シリーズの奥深さに感心します。

 

 

 

 

この後の続編はこちら

汚れた赤を恋と呼ぶんだ

凶器は壊れた黒の叫び

夜空の呪いに色はない

きみの世界に、青が鳴る

 

おわりに

「階段島シリーズ」初めは、「いなくなれ、群青」という作品自体がシリーズ物だという認識もなく読み始めていたので、慌てて続編を探しました。それほど先が気になってしまう物語だったのです。この「その白さえ噓だとしても」は登場人物の視点ごとに時系列を追って描かれていて、主人公である七草以外の人物のストーリーを読んでいきます。なので、今回のように佐々岡だったり水谷だったりと、七草とは違ったある意味での普通の高校生の心情が描かれているので、もどかしいような苦しいような甘酸っぱい気持ちを体感できます。私には難しい表現も多く何度も文章を読み返して理解しようと努めたりもしてしまうのですが、この世界観が独特で没入してしまいます。この先にもまだ続いていくので、ぜひそちらのレビューもご覧いただけたらと思います。