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【小説】「この嘘がばれないうちに」レビュー

【小説】「この嘘がばれないうちに」

サンマーク出版



 

著者 川口俊和 

出版 サンマーク出版

 

 

コーヒーが冷めないうちに」の続編として、2017年に初版発行されたこの作品。喫茶店フニクリフニクラで巻き起こされる奇跡の物語です。愛する人を想う気持ちが生み出した、不器用でやさしい4つの「嘘」。過去に戻れる不思議なあの喫茶店に、4人の男たちが訪れる。幸せとは、親とは、夫婦とは…それぞれが抱えた想いに涙が止まりません。過去に戻っても現実は何も変わらない、それでも戻っていった人たちは確かに何かが変わっている。それは過去でも現実でもなく自分自身。この物語でも、確かに現実は何一つ変わらなかったが、主人公や周りの人たちは確実に救われていく。コーヒーが冷めるまでの間だけ、それだけの短い時間でも会いたい人に会えるのなら何を伝えたいですか?

 

 

 

あらすじ

ある街の喫茶店に不思議な都市伝説がある。それは、「過去に戻れる」というもの。喫茶店の名前はフニクリフニクラ。その喫茶店のある席に座り注がれたコーヒーが冷めるまでの間望んだ時間に行くことができる。ただし、その時間旅行には非常に面倒くさいいくつもの”ルール”が存在していた。そんな不思議なタイムスリップの噂を知った人々が訪れ起こす奇跡の物語。そして、フニクリフニクラで働く、時田数。彼女は過去に縛られ人と関わらないよう過ごしてきた。彼女にもまた転機が訪れ…。「コーヒーが冷めないうちに」シリーズ2作目となる本作。数の過去、そして未来へ繋がる物語が始まる…。

 

 

 

 

感想

「もし、妹の死がきっかけで私が不幸になったら、妹は私を不幸にするために死んだことになるでしょ?だから、私は不幸になんかならない。絶対、幸せになってみせる。そう誓ったの。私の幸せは、妹の生きていた証だから……。」(「この嘘がばれないうちに」第四話『夫婦』より参照)

この言葉に全ての結末が込められているように感じました。亡くなった命を悼むために自分の幸せを無下にするのは、生きた意味を無くしてしまう事になる。そんな風に感じる事ができるのはきっと精一杯向き合ったからこそだと思います。それはきっと難しい事です。簡単な事ではないでしょう。第一話『親友』で、過去に戻った男は、後悔と決意を胸に22年前の親友の前に現れます。その隠された本心に、胸が詰まります。「お前は、幸せになっていいんだ!」その親友の言葉に全てが込められていました。現実は変えられなくても、かけがえのない信頼と友情、生きた証を感じ前を向いていく主人公はとても清々しい気持ちだったことと思います。そしてこの物語では、数についても多く描かれています。数は、母が過去に戻るための儀式を自分がしたことで、母が過去から戻ってこられなかった(死んでしまった)のは自分のせいだと思い「幸せになってはいけない」と縛りつけていました。そんな彼女に、人と関わり、愛する人ができた事で変化が起きていきます。背負い続けた母の死を乗り越え、数が前へ進んでいこうとする姿、長く苦しみ続けていた姿に胸が詰まる想いでした。この物語では、「死」についてや、「幸せになること」などについて書かれている印象で、それは遠い話のようでいつも身近な事のようで、だれもが共感できるような心情を描いていると感じました。そしてタイトルのとおり、「嘘」を中心に描かれています。嘘と言っても人を傷つけるための嘘や保身、騙すためではありません。誰かのため、守るもののためについた嘘。そんな切ない思いが溢れた一つ一つの物語で考えさせられます。

 

 

 

おわりに

コーヒーが冷めないうちに」の続編として出版された2作目。物語は7年後のフニクリフニクラを舞台に展開されます。物語は続いているので、ぜひ1作目から読んでもらう事をお勧めします。(内部リンク)1作目から7年後という事で、流の子供である未来は小学校への入学を控えたところから始まります。そんな姿も1作目を読んでいると成長に目を潤ませる微笑ましい光景で、一緒に過ごしてきた流、数もまた同じように未来の母、計に思いを馳せていることと思います。こうした展開で”親子”にフォーカスを当てた物語が中心となっています。母、父の想い、子の想い、さらに亡くなった妻へ会いに過去に戻りたい夫や、結婚するはずだった女性に会いに未来へ行く男。涙なしには読めない作品となっていました。特にこれからの展開にも繋がる”数の過去”が明らかになり、数の想いに胸が詰まります。3作目、4作目とフニクリフニクラでの奇跡は続いていくので、最後まで思い切り楽しめるシリーズになっています。

コーヒーが冷めないうちに」の実写映画でもこの「この嘘がばれないうちに」の設定が一部反映されている箇所があります。ぜひ「映画 コーヒーが冷めないうちに」も楽しんでみて下さい!(内部リンク)