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「いなくなれ、群青」続編第3弾「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」※ネタバレあり 1作目・2作目まだの人は読まないで!

「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」

新潮社

平成28年1月1日 発行

平成28年10月30日 4刷

著者 河野裕(こうの ゆたか)

発行 新潮社

 

 

この作品は階段島シリーズ第1作目「いなくなれ、群青」と、2作目「その白さえ噓だとしても」の続編として描かれていますが、この世界の秘密がしっかり明かされる大事な物語になるので、1作目・2作目をまだ読んでいない方はこの記事も読まないでくださいm(__)m

階段島に来る前の七草、真部のお話、そして現実世界と階段島をつなぐ「魔女」の存在、現実の七草、真辺が捨てたものは?そして、現れた謎の少女・安達。魔女を探すため手を組むことになった七草と安達が辿り着いた結末は…。そして、悲しい境遇の小学生 大地を救う為に真辺は葛藤するが…。

 

あらすじ

「引き算の魔女ー。」ひっそりと語り継がれる噂話。引き算の魔女は人格の一部を消し去ってくれる。例えば怒りっぽい人格、怠惰な人格…そんな自分のいらない人格をスポっと抜き取ってくれる魔女がいる。夏休みの終わり、真部由宇と再会したことをきっかけに七草は魔女を探す安達という少女と手を組み噂を追い始める。そして現実世界での七草は失くした人格と現実の自分と葛藤しながら、悲しい運命を目の当たりにする。

 

重要人物の登場

「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」で登場する新しい人物 安達 は、七草と同じ年の高校1年生の女の子。魔女を名乗ったホームページを開設していて、そこにメッセージを送ってきた七草に興味を示し会う事になります。七草と雰囲気、思考が似ているように感じられますが、魔女を追う理由にはどんな秘密があるのか、彼女の目的は?正体は?まだまだ分からない事が多い謎の少女です。

 

感想

ここからはネタバレを含む感想を書いていきたいと思いますので、まだ1作目2作目を読んでいない方は戻っていただき他のレビューをぜひ読んでみて下さい。

 

 


 

 

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まずこの「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」は、現実世界のお話 という点がポイントです。階段島が捨てられた人たちー、つまり引き抜かれた人格が集められた島であり、人格を捨てた側の人々の世界がもちろんあります。「いなくなれ、群青」では実際に七草は現実世界の七草と会っています。そこで「相原大地を探して守れ、真辺がそれを望んでいる」と伝え、その通りに七草と真辺は大地を探し出し救う方法を模索していきます。さて、この現実世界での七草が何を捨てどのように変化したのか…。捨てた人格の分の空白を埋める作業と七草が表現し、葛藤していく様子も描かれ、捨てたもの、そして真辺への複雑な想いが文章で語られることがとても美しく、言い表すことが難しいようなもどかしさや痛みを感じました。大地という存在を通して、七草が愛した真辺の人格が変化していくことへの恐怖や絶望感が悲しくもあり成長を見届けるようでもあり、恋と呼ぶんだという表現がこんなにも重いのかと唸らされます。プロローグで、七草はこの物語を「ひとつの初恋が終わるまでの物語として、あるいは、ひとつの初恋が生まれるまでの物語として。」と言っています。この言葉の意味を最終章で理解した時、胸に衝撃が走りました。これが七草にとっての「恋」になったのだと。それを成長と呼ぶのか、捨てたと言うのか…。

そしてもう一つの大きな展開として、現実世界でも”魔女”が七草たちの前に姿を現します。階段島での印象と違いはありませんが、安達とは何か以前からの知り合いのような雰囲気で、安達の不穏さがどんどん増していきます。安達は敵なのか?善なのか、悪なのか。ラスト、安達は階段島に現れます。階段島の七草がなんのためにこの島に来たのかと聞くと、「奪い取るため」と答えた安達。新たな嵐の予感で物語は終結します。一気に現実と階段島が繋がる今回の物語…秘密が明らかになるのが近づいている気配にワクワクが止まらず、続編へ手を伸ばしてしまいます…。もっとゆっくり楽しみたいけど続きが気になる!これからどうなるの!…と。この後「凶器は壊れた黒の叫び」へと続きます。

 

おわりに

この物語で一気に現実感が表されて、魔女の存在だったり七草や真辺が人格を捨てたのだという真実とその現実の姿にリアルな若者の気持ちが描かれ”階段島”での七草たちとはやはり違う人格なのだと感じさせられます。正直、七草の表現には難しさを感じていましたが何度も読み返すことでより理解が深まりどんどん自分の中に沁み込んでいくような気がします。このシリーズ、河野裕小説に出会って良かったなと、自分の成長も感じられお薦めの作品です。

 

小ネタ:階段島で堀が暮らす寮「コモリコーポ」が現実世界でも「古森コーポ」として登場します。これは、安達が魔女、つまり堀に会うために大地をかくまったアパートの名前ですが、偶然同じ名前というわけではないはずです。何か仕掛けがあるのでしょうか⁉

 

 

「いなくなれ、群青」のレビューはこちらから。登場人物なども紹介しています。

「その白さえ噓だとしても」のレビューはこちらから。魔女正体が明らかに…‼