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【小説】夜空の呪いに色はない|階段島シリーズ 「いなくなれ、群青」続編第5弾!!

「夜空の呪いに色はない」

新潮社

平成30年3月1日 発行

著者 河野裕(こうの ゆたか)

発行 新潮社

 

 

 

”階段島シリーズ”第5弾「夜空の呪いに色はない」は、ついに大地の問題について階段島、現実世界の七草たちがそれぞれ動き出すー。大人とは?子供とは?そして魔女の悲しい過去が今に繋がる。心の中を開放したそれぞれの向かう先は…。

 

あらすじ

かつて子どもだったすべての大人たちへ。

階段島の郵便配達員の時任は心の奥底にある傷を抱えていた。それはこの階段島の始まり、理想に関わる事で…。大地を現実へと戻すため七草たちは協力者トクメ先生と一緒に階段を上るが、そこで思いもよらない事が起こり、階段島は窮地に陥る。その先に待つ魔女の呪いとは?さらに大地の境遇をまざまざと突き付けられた七草は…。物語は最終章へ向けて強く動き出す。

感想

階段島の郵便配達員・時任は七草や真辺たちを応援しつつも傍観者でいる事にこだわっていた。その心に残る傷を抱えたまま、ただ観客でいる事を選んだ彼女の過去に何とも言えないざわつきを覚えます。魔女の呪いによってそれぞれが強い理想を抱いていたが、内側から崩れる危うさと希望が折り重なりもどかしくも切ない物語に息を飲まされました。そして、トクメ先生の言葉に大人だからこそ深く刺さるものがありました。「大人の意地」まさにその通りに私たちは日々、大人である事を意識し、意地によって乗り越えているような気がします。それが責任であり、”歳を重ねる”といった分かりやすい物差しでこの景色を見ているのだと。何を捨てて拾っているのか、選択をして、夜を越えて、そうして出来上がった今の自分にしかできない何かでまた拾って捨てて、を繰り返しているのでしょう。登場人物の中であえて自分に似ているのは誰だろうかと考えたときに浮かんだのは堀でした。彼女は言葉を大切に扱います。言葉がもたらす影響をとても考えているから。その点で(口数は少なくないけど)考え方が似ていると感じました。真辺はまず言葉をぶつける事を大切にします。傷つけてもそこからぶつかり合えば分かり合えると信じています。それはとても怖いことだと感じてしまうので、堀の慎重すぎる言葉選びに共感してしまうのです。そして、理想を叶えるための強さ、優しさには憧れを持ちます。どんなに自分がつらくても傷ついても、優しさを忘れない彼女は誰よりも強いのだと思います。

 

これまでのレビュー

「いなくなれ、群青」から始まった階段党島シリーズを読んでいく順番はこちらの並びになります。一度読み始めたら止まらない、心を穿つ青春ミステリ!ぜひご覧ください。

 

おわりに

いよいよ、物語は終盤になります。次巻「きみの世界に、青が鳴る」がシリーズ完結巻。今回のお話でおおよその結末が描かれているように感じますが、魔女はどんな答えを出すのか、そして、七草の理想は、真辺との関係は、様々な事に答えが出る完結巻に期待しています。しかし、このシリーズがついに終わってしまうのかという寂しさもあり、読み切ってしまうのが勿体ないような気もしています。何度も読み返したい作品ではありますのでまた「いなくなれ、群青」から読み始め、ハラハラドキドキしながら考え込んで世界に没頭して行くんだと思います。様々な年代の方が楽しめる内容だと思いますので、色んな人にオススメしたいですね。思考の深いところを常に言葉で表現してくれるこの作品には、いつの間にか気持ちの落とし所を見つけて貰えるような気がして若い人には勿論、大人世代の方でも思うところがあるはずです。最後、それぞれの登場人物がどのような結末を迎えるのか、楽しみにしたいと思います。