「植物図鑑」
画像:KADOKAWA
著者 有川浩
出版 幻冬舎文庫
ー お嬢さん、よかったら 俺を拾ってくれませんか ー
この小説の帯に書かれた言葉。
”植物図鑑”なんて、図鑑のコーナーに並べてありそうなタイトルの文庫本に書かれたこんなセリフに頭は「???」
どんな恋愛小説になっているのでしょう?ー とびきり美味しい(ちょっぴりほろ苦)”道草”恋愛小説 ーというキャッチコピーとともに書かれたこの帯だけでこの文庫本を手に取っていました。タイトルを裏切ることなく最初の6ページはカラーの写真でたくさんの植物が載せられていました。そのどれもが、道端に生息するような”雑草”。目にしたことのあるポピュラーな野草が多く、そんな名前だったの?と発見のある巻頭ページをめくっていくと、目次が現れます。その目次もまた、植物図鑑のように草花の名前になっています。そして最後には、巻末特別付録としてイツキの”道草料理”レシピなる文字も…。これは今までに出会った小説にはなさそうだ、と思い楽しみになりました。
あらすじ
一人暮らしの会社員・さやかが終電ギリギリの飲み会帰りにマンションの下でみつけたのは、丸くなって植え込みの中に転がっている同年代の男。「行き倒れてます」という彼は「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」まるで犬のように…さやかはそのセリフがツボに入ってしまい、素性も知れない男を家に上げてしまうのでした。「咬みません。躾のできたよい子です」そう最初に宣言した通り”よい子”だった。家事万能のスーパー家政夫なその男・樹との風変わりな同居生活。彼の個人情報は樹(イツキ)という名前だけしか知らない。それでも優しい彼との生活に癒されるさやかはいつしか恋をしていました。彼は何者でこれからどうなるのか、ちょっぴりほろ苦な恋愛小説です。
感想
「植物図鑑」のタイトル通り、この物語の中心にはいつも植物がありました。「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」イツキがさやかに教えた名言です。道端に生える草花に名前があるなんて意識したこともほとんどありませんでしたが、この作品を読んでから、道端に生える草花に目が行くようになりました。さやかもそんな私たちと同じように草花に興味もありませんでした。イツキは重度の植物オタク。週末になると二人は近所へ「狩り」に出かけます。河原に生える草花や道端の草、それらを採取する事で、採れた野草を使ってイツキが手料理をふるまいます。それはそれは美味しそうに表現されていて、マネはできないだろうと思いつつも、想像します。顔の良い長身の男性が自分のために手料理をふるまってくれて、夜は危ないと過保護になったり、心を掴まれるには十分なシチュエーションで、二人の想いは繋がっていきます。が、ここからほろ苦。さやかの苦しみが痛々しくて。それでもほっこりするこの作品は何度も読み返してしまう癒しの一冊となりました。
おわりに
最後の巻末特別付録 イツキの”道草料理”レシピ もしっかり写真付きで、まるでレシピ本のように作中でイツキが作ってくれる料理が載せられています。食べてみたいけど、そんな草本当に生えてるの?生えてても採取して料理する勇気が持てませんが。(笑)今までにない切り口の物語で、ちゃんとラブストーリー。等身大な主人公にも共感します。なんだかもどかしくてキュンとする、何度も読み返したくなる作品でした。
こちらも実写映画化されていますが、今のところ観られていません。また鑑賞しましたらレビューを上げていこうと思います!なんと言っても、さやか役を高畑充希さん、イツキ役が岩田剛典さん。ポスターからさわやかさ全開!楽しみです。
GoogleBooksで試し読みができます!ぜひ読んでみて下さい。
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