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【小説】「阪急電車」関西圏の人ならこのローカル具合はたまらない!?交差する物語にほっこりするの間違いなし!

阪急電車

幻冬舎

著者 有川浩

幻冬舎文庫

2010年8月5日 初版発行

2011年4月30日 18版発行

 

阪急電車】とは、関西圏の大きな私鉄で、特に宝塚駅と言ったら梅田へ向かう宝塚線今津線が合流しさらにJR宝塚線にも乗り換えができるやや大きなジャンクション。そしてこの物語は、そんな阪急電車各線の中でも知名度が低いであろう今津線を舞台に乗り合わせた人々の様々な人間模様、奇跡や葛藤、ほっこり胸キュンの傑作長編小説です。

 

 

あらすじ

隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人…。乗り合わせただけの乗客たちの人生が少しづつ交差し、人数分のドラマを乗せた阪急電車。恋の始まり、別れの兆し、途中下車…

そんな日常のちょっとほっこりする人間模様を阪急電車を舞台に紡ぎ出される物語。

 

感想

目次が駅名になっている。どんな流れで展開されるのか、と読み進めると物語が交差しあの人がここに、この時のあの人が…と巡り巡って展開される乗客の物語に驚かされました。一つ一つの章でほっこりし、納得し、スッキリし、いろんな人間模様がスッと心に染みこんでくるような物語。特に好きなシーンは、乗り込んできた女子高生たちの話に聞き耳を立ててしまうという場面で、話の中心にいるのは社会人の彼氏がいる「えっちゃん」その話術がすばらしく面白いので、つい吹き出してしまいそうになるほど。日常の一コマを面白おかしく喋り友人を引き込むえっちゃんもまた、大学受験を控え様々な思いを抱えていたという物語もあり、ここまで拾い上げて人間模様が描かれているのはもはやトリックの一種と思えてしまいます。電車を舞台として乗り込んでくる人一人一人の登場人物にドラマがあり、交差する思いや背景に胸が躍り読み進めてしまいます。電車に乗ったらついドラマを描いてしまいそうな気分になりました。

 

おわりに

関西圏在住でもないし、普段電車は使わない、そんな人でももちろん楽しめる作品です。自分がもしこんな風に物語の一員になったら…乗り合わせたあの人にもどドラマがあるのかも…なんて。著者の有川浩さんは舞台となった今津線沿線にお住まいだったとのことです普段利用する交通手段であったのでしょうか。そんな日常の中でこんなドラマを描いてしまう素晴らしい感受性の持ち主だと思いました。笑いあり涙あり、電車線路のように交差したり並行したり、そんなすごく特別じゃないのにドラマティックな物語、ぜひご乗車下さい!



 

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